雨が降ります。

今日も、沢山の雨が降り、
今日も、沢山のさよならを。



ぼくは、「さよなら」を言うとき、「ら」に一番力を入れて発音する。

「ら」を少し長くのばして、「さよならあ」となることもある。

なぜなら、離れているときしか、「さよなら」を言わないからである。

船が港を出て、二人のあいだに海が五、六メートルの間隔をもたせたとき、
汽車がプラットホームを離れて、相手の顔が見えなくなりかけたとき、
「さよならあ」とのばす。

自分では、きっぱり「さよなら!」と言い切ったつもりなのに、
未練屋の「ら」の音が勝手に名残を惜しんで、「さよならあ」となるのである。

だから、プラットホームが長くて、別れがつらいときほど、「ら」も
長くなって、ときには、「さよならああああああああああああ」と、
「らあ」だけで、五十メートルものびてしまうことがある。

だが、ことばを切るハサミというのはどこにも売っていないから、
花でも切り捨てるように「らあ」を切ってしまうことはできないのである。




寺山修司の文章です。


今日は電車に乗って窓の外を眺めていました。
雨が降っていて。

ほんの近くで、沢山の人が流されたり、巻き込まれたというニュースが流れてきました。
でも、街は何もなかったかのように、動き続けているのからか、
涙が出てきました。

いつもどこかで起こっていることだし、世界では、
誰かが死んで、誰かが生まれているのだけど、

今日は「らあ」を切ることができませんでした。

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晴れたらいいな。
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by mihodontan | 2011-09-05 22:03 | 日常 | Comments(0)